散歩の途中で座り込んでしまう、フローリングで足を滑らせてしまう、後ろ足に力が入らずよろける。「うちの子はまだまだ元気」と思っていたのに、ふとした瞬間にそんな様子を目にして、驚いてしまった飼い主様も多いのではないでしょうか。改めて年齢を数えてみて、「もうシニアだったんだ」と気づかされることもあるかもしれません。
「もう年だから仕方ない」と諦めてしまいそうになりますが、シニア期に入ってからでも、日々のケア次第で足腰の状態は変わってくるといわれています。
この記事では、原因の見極め方から、自宅ですぐに始められる対策まで、順を追ってご紹介していきます。
老犬の歩行トラブル、諦める前にできること

犬の寿命が延びるにつれて、足腰の衰えに悩む飼い主様は年々増えています。
散歩中に座り込んでしまう、抱き上げるときに以前より軽く感じる、後ろ足がふらつく、こうした変化に気づいたとき、多くの飼い主様が「年齢のせいかも」と受け止めがちです。
しかし、シニア期に入った犬ちゃんでも、日々のケアや運動によって足腰の状態を保ちやすくなります※1。大切なのは、原因を正しく見極めたうえで、その子に合った対策を無理のない範囲で続けることです。
まずは、次の章でご紹介するチェックポイントで、足腰の状態を確認してみましょう。
老犬の足腰に現れる「要注意サイン」🔍

小さなサインでも、気づいてあげられるのは毎日そばにいる飼い主様だからこそです。
日常的に見られる症状✅
以下のような様子が見られたら、足腰の衰えのサインかもしれません。
✅ 散歩の途中で座り込む、以前より歩く速度が遅くなった
✅ フローリングで足が滑る、踏ん張れずによろける
✅ 立ち上がるときにふらつく、後ろ足が崩れるように座り込む
✅ 後ろ足を引きずるように歩く
すぐに動物病院へ相談したいサイン⚠️
一方で、以下のような症状は緊急性が高い可能性があります。「様子を見よう」と時間を置かず、早めに動物病院へ相談してください。
⚠️ 突然立てなくなった、急に後ろ足が動かなくなった
⚠️ 足を引きずりながら同じ場所をぐるぐる回る
⚠️ 首をかしげたまま元に戻らない
⚠️ 排泄が急にできなくなった、失禁が急に増えた
このような変化は、老化だけでは説明できない神経の病気が隠れている場合があります※2。早期に気づいてあげることが、犬ちゃんの負担を減らすことにつながります。
📖歩き方の異常に加えて、ぼんやりする、同じ場所をぐるぐる回り続けるといった様子が見られる場合は、認知機能の低下が関わっていることも。詳しくはこちらをご覧ください🌀🐕
なぜ足腰が弱るのか?考えられる主な原因

加齢による筋肉量の低下
犬はもともと体重の多くを前足で支えて生活しているため、後ろ足の筋肉から衰えが始まりやすくなります※3。年齢とともに自然に筋肉が減っていくこと自体は、多くの犬に見られる変化です。
ただし、短期間で急に痩せていくような場合は、別の病気が隠れていることもあるため、気になったら動物病院に相談しましょう。
関節や骨の痛み・疾患
変形性関節症などの関節の病気や骨の痛みが原因で、後ろ足に体重をかけられなくなっているケースもあります。
犬は痛みを言葉で伝えられないうえに、弱みを見せないよう本能的に痛みを隠そうとする傾向があります※4。「年のせい」と決めつけず、よろける・踏ん張れないといった様子が見られたら、痛みのサインかもしれないと考えてみることも大切です。
脊髄や神経の異常
加齢に伴って、脊髄や神経に関わる病気が原因となっていることもあります。
- 椎間板ヘルニア
脊髄が圧迫されることで、後ろ足の麻痺や痛みが生じる代表的な病気です※5。老犬に多く見られる病気の一つで、症状の程度によって対応が大きく異なります。
📖ヘルニアの詳しい症状や治療については、こちらの記事で解説しています🐩🩹
- 脊髄梗塞
血流の障害によって、突然足が動かなくなることがあります※6。 - 脳の病気
脳腫瘍や脳炎など、歩行に影響を及ぼす病気が原因となる場合もあります※1。
これらは自己判断が難しいため、気になる症状がある場合は動物病院での診察をおすすめします。原因がわかるだけでも、気持ちが少し軽くなることもあるはずです。
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住環境の整備で滑りと段差を減らす🏠
フローリングは老犬にとって踏ん張りにくく、転倒やケガのリスクにつながる床材です。滑り止めシートやマットを敷くことで、足腰への負担を減らすことができます。
階段やソファーへの上り下りも、足腰に大きな負担がかかる動作です。無理な上り下りを避け、必要に応じてスロープやステップ(踏み台)を活用しましょう。

📖段差対策の選び方については、こちらで詳しくご紹介しています📐🐕
また、肉球まわりの毛が伸びていると足が滑りやすくなるため、定期的なカットも滑り対策の一つになります。
散歩と自宅トレーニングで足腰を動かす🐕
●散歩コースにひと工夫を
散歩は、アスファルトだけでなく土や芝生の上を歩く時間を取り入れることで、後ろ足への刺激や気分転換につながるといわれています。
犬ちゃんの体調に合わせて、無理のないペースで続けることが大切です。
📖散歩の時間や頻度、歩きたがらないときの対応については、こちらでまとめています🐕🦺
●立ち座りの繰り返しで体幹から支える
歩くための土台となるのが体幹です。体幹がぐらつくと、後ろ足だけをどんなに鍛えても踏ん張りが安定しにくいといわれています。
特別な道具は必要なく、立ったり座ったりをゆっくり繰り返すだけで十分な効果が期待できます。おやつを鼻先の高さに掲げて「おすわり」を数秒キープさせるのもよい方法です。自然と姿勢が整い、バランス感覚も養われるといわれています。
慣れてきたら、バランスディスクのような不安定な台に足を乗せて静止させる方法も取り入れられます。ただし、姿勢が崩れたまま続けると関節を痛める心配があるため、始める前に獣医師やリハビリ専門スタッフに相談しておくと安心です。
●タオルをまたがせて後ろ足を意識的に動かす
体幹が整ってきたら、後ろ足そのものを動かす運動も取り入れてみましょう。
日常の歩行だけでは持ち上げる機会が少ない後ろ足を、丸めたタオルをまたがせることで意識的に動かせます。高さの目安は犬ちゃんの膝ほどまでにし、それ以上高くすると跳び越える動きになって関節に負担がかかってしまうため注意しましょう。タオルであれば、もしつまずいても大きなケガにつながりにくく、初めての運動として取り入れやすい方法です。
いずれのトレーニングも、犬ちゃんが嫌がる様子を見せたらすぐにやめることが大切です。
回数や時間を欲張って長時間続けると、かえって運動そのものを嫌いになってしまうこともあります。毎日ほんの数分でも、無理なく続けることを意識してみてください。
マッサージで血行を促す🙌
温めた手のひらで、足の付け根から足先に向かって優しくさすることで、こわばった筋肉がほぐれ、血行が促されます。犬ちゃんに話しかけながら、コミュニケーションの時間として取り入れるのもよいでしょう。優しく「よしよし」する程度の力加減で、犬ちゃんがリラックスできる静かな環境で行うのがポイントです※7。
マッサージのときは、以下の点に注意しましょう。
- 指を立てて、骨や関節をゴリゴリ押さない
- 毛並みに逆らって強くこすらない
- 痛がる、体をこわばらせる、逃げようとするなど、嫌がる様子が見られたらすぐにやめる
「揉む・押す」というより、手をあてて「温める」くらいの感覚で十分です。爪の色が白くなっていたら、力が入りすぎているサインなので、力をゆるめてあげてください。
腫れや強い痛みがある場合は、マッサージを行わず獣医師に相談しましょう。
どの方法も、犬ちゃんとの触れ合いの時間そのものが、何よりのケアになります。
便利な補助用品の活用

自宅でのケアに加えて、補助用品を取り入れることで、犬ちゃんの負担と飼い主様の介護の負担、どちらも軽減できる場合があります。犬ちゃんに合ったものを、必要に応じて上手に取り入れてみてくださいね。
歩行補助ハーネスは、立ち上がりや歩行をサポートする用品として広く使われています。前足用・後ろ足用・全身用などタイプもさまざまで、犬ちゃんの状態に合わせた選び方が大切です。
📖歩行補助ハーネスの詳しい選び方や手作り時の注意点は、こちらをご覧ください🐕🦺💛
このほか、自力で立つことが難しくなった犬ちゃんには、姿勢を支えるサポートクッションを使うことで、食事や日々のケアがしやすくなる場合もあります。
長時間同じ姿勢で過ごすことが増えてきた犬ちゃんには、体圧を分散するマットやベッドを取り入れることも一つの選択肢です。
📖老犬におすすめのマットやベッドについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています🛏️💚
食事とサプリメントでの健康管理

体重が増えすぎると、腰や関節への負担がさらに大きくなります。年齢や運動量に合った食事量を意識し、適正体重を保つことも足腰のケアの一部です。
関節の健康をサポートする栄養素として、グルコサミンやコンドロイチン、オメガ3系脂肪酸(EPA・DHA)などが知られています※1。食事やサプリメントで取り入れる際は、かかりつけの獣医師に相談しながら進めると安心です。
また、後ろ足を踏ん張れず排便がしにくくなっている場合は、食物繊維を意識した食事に見直すことで、排泄の負担を減らせることがあります。
毎日の食事も、犬ちゃんの体を内側から支える大切な時間です。
まとめ:小さな変化を見逃さず、できることから始めましょう
老犬の足腰の変化は、日々の小さな観察から気づけることがほとんどです。歩き方や座り方のちょっとした違いを記録しておくことが、早期の対応につながります。
住環境の整備、無理のない運動、補助用品の活用。どれも一度にすべてを行う必要はありません。その子のペースに合わせて、できることから少しずつ取り入れてあげてください。
気になることがあればかかりつけの獣医師やペット介護士などの専門家にも相談しながら、その子の「今」に合わせたペースで、無理なく寄り添ってあげてください。
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【参照文献】
※1 桑原動物病院 老犬ホーム・シニアケアサービス「老犬が踏ん張れなくなってしまった時の対処法について獣医師が解説」
※2 とがさき動物病院「高齢犬の神経症状┃加齢に伴う変化と要注意サイン」
※3 Purina Institute「犬と猫のサルコペニア」







