老犬の夜泣き対策|原因別ケアと耐えられないときの対処法

老犬の夜泣き対策|原因別ケアと耐えられないときの対処法

「また鳴いてる……」と夜中に目が覚める。
どんなに疲れていても、眠れない夜が続いている。

シニア犬の介護をしていると、夜泣きほど飼い主様の心と体を削っていく問題はないかもしれません。

「なぜ鳴くのかわからない」「何をしてあげればいいの?」
そんな不安や途方に暮れる気持ちを抱えながら、今夜もひとりで向き合っている飼い主様がたくさんいらっしゃいます。

老犬の夜泣きは、「年のせいだから仕方ない」と諦めなくていいのです。

原因を知り、その原因に合ったケアをすることで、夜泣きが劇的に改善するケースは少なくありません。このコラムが、あなたと愛犬ちゃんの夜を少しでも穏やかにする手助けになりますように。

老犬の夜泣き、何歳から始まる?どんな鳴き方をするの?

首をかしげるチワワ

何歳ごろから起きやすい?

老犬の夜泣きは、小型犬では11〜13歳以降、大型犬では8〜10歳以降に見られることが多いとされています。ただし個体差が大きく、「急に始まった」と感じる飼い主様も少なくありません。

どんな鳴き方をするの?

夜泣きの鳴き方はさまざまです。

  • 「クーン、クーン」と切なそうに鳴き続ける
  • 「ワンワン」と大きく吠え続ける
  • 遠吠えのようにウォーウォーと鳴く
  • 鳴き声というより、うめき声に近い

鳴き方の違いは、原因のヒントになることがあります。次のセクションでひとつずつ確認してみましょう。

📌 対応のポイント

夜間の様子をスマートフォンで動画撮影しておくと、獣医師が判断しやすくなります。暗くて撮りにくい場合は、音声だけでも記録しておくと役に立ちます。

なぜ夜に鳴くの?老犬の夜泣き4つの原因

遠吠えをする柴犬

老犬が夜泣きをする理由は「年を取ったから」というひと言では片付けられません。主な原因は4つあります。

① 認知機能不全症候群(CDS)——犬の認知症

老犬の夜泣きでもっとも多い原因のひとつが、認知機能不全症候群(Canine Cognitive Dysfunction Syndrome:CDS)、いわゆる犬の認知症です。

脳の老化によって神経細胞が失われ、体内時計が乱れることで昼夜逆転が起きやすくなります。夜中に「ここはどこ?」「ひとりぼっちだ」という混乱や不安から鳴くことが多く、徘徊しながら鳴くケースも見られます※3。
認知症には「DISHAA評価」というチェック指標があります※1・※2。

DISHAA主な症状
Disorientation(見当識障害)家の中で迷う、家具にぶつかる
Interactions(社会的交流の変化)飼い主を認識しなくなる、甘えなくなる
Sleep-wake cycle(睡眠サイクルの乱れ)昼夜逆転、夜に活動・鳴く
Housetraining(排泄の失敗)覚えていたトイレを失敗する
Activity(活動量の変化)ぼーっとしている時間が増える
Anxiety(不安)意味なく不安そうにする、後追いが増える

3つ以上当てはまる場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。

② 身体的な痛みや不快感

老犬は関節炎や椎間板疾患、内臓疾患などを抱えているケースが少なくありません。日中は動いているため気づきにくくても、夜に横になると特定の体勢が痛い、じっとしていると不快ということがあります。

また、寝たきりの老犬では床ずれ(褥瘡)の痛みが夜泣きにつながることもあります。痙攣を伴う夜鳴きは、神経疾患のサインである可能性もあるため、早めに受診してください。

「痛みから来る夜鳴き」は、うめくような低い声が特徴的なことが多いです。

③ 視力・聴力の衰えによる不安・寂しさ

老化によって視力や聴力が低下すると、愛犬ちゃんの世界からどんどん情報が失われていきます。暗い夜間は特に周囲がわからなくなり、強い不安から鳴くことがあります。

「飼い主様の存在を確認したい」「ここにいるよと教えてほしい」という気持ちから鳴いているケースも多く、一緒に寝ることで夜泣きが落ち着くという飼い主さんのお声はよく聞かれます。

④ 不快感・要求からの夜泣き

以下のような身体的な不快感や要求が原因になっていることもあります。

  • 空腹・喉の渇き:代謝の変化により夜中に空腹を感じやすくなる。夕食の時間が早すぎると明け方近くにお腹が空いて鳴くことがある
  • トイレ:高齢になると頻尿や尿漏れが増える
  • 温度:暑すぎる・寒すぎる
  • 体位変換の要求:寝たきりで自分で動けない

「急に夜泣きが始まった」場合、こうした環境や体調の変化が引き金になっていることも多いです。就寝前のご飯のタイミングや水の補充なども見直してみましょう。

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今日からできる対策|愛犬の安眠をサポートする3つのアプローチ🔖

気持ちよさそうに眠るヨークシャーテリア

原因がある程度わかったら、対策を組み合わせていきましょう。大きく以下の3つのアプローチがあります。

  • アプローチ① 生活・環境の見直し
  • アプローチ② 栄養サポート(サプリ・フード)
  • アプローチ③ 医療的ケア(薬・漢方など)

この章ではアプローチ①とアプローチ②を重点的に、次の章ではアプローチ③をより詳しくご紹介します。

アプローチ① 生活・環境の見直し

生活リズムを固定する

認知症の犬に特に有効なのが、毎日同じ時間に起き、食事をして、散歩に出るという規則正しいルーティンです。体内時計のリセットには朝の日光浴が効果的で、天気の良い日は10〜15分、日当たりのよい場所で過ごすだけでも昼夜逆転の改善につながることがあります。

また、日中に適度な刺激を与えることも重要です。短い散歩、知育おもちゃ、「おすわり」などの簡単なコマンド練習で脳を使わせることが、夜の安眠につながります。

寝床を見直す

  • 隙間風を防ぐ:老犬は体温調節が苦手なため、寝床の位置を確認する
  • 体圧分散マット:関節への負担を減らし、寝返りが打ちやすくなる
  • 飼い主様の匂いのするタオル:不安を和らげ、安心して眠れることがある
  • ナイトライト(薄暗い照明):視力が落ちた犬はうっすら明るい方が安心することがある

一緒に寝ることの効果

飼い主様の体温やにおい、心拍音は、愛犬ちゃんにとって大きな安心感を与えます。衛生面や睡眠の質を考慮したうえで、ベッドサイドにマットを置くだけでも効果がある場合があります。

アプローチ② 栄養サポート(サプリ・フード)

MCTオイル(中鎖脂肪酸)

加齢した犬の脳は、通常のエネルギー源であるブドウ糖をうまく利用できなくなることがあります。MCTオイルを摂取することで生成されるケトン体が脳の代替エネルギーとして働くとされており、認知機能の改善に期待されています。最初から大量に与えると下痢になることがあるため、少量(小型犬なら1日0.5〜1ml程度)から始めましょう。

DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)

青魚に多く含まれるDHA・EPAは、神経の炎症を抑え、脳の老化を遅らせる効果が期待されています。シニア犬向けの療法食やサプリメントに含まれているものが多く活用しやすいです。

抗酸化物質・メラトニン

ビタミンE・ビタミンCなどの抗酸化物質は脳の酸化ストレス対策に有効とされています。また、体内時計の調節に関わるメラトニンのサプリメントが夜間の夜鳴き・昼夜逆転に効果があるという報告もあります。使用前に獣医師にご相談ください。

📌 サプリを選ぶときのポイント

サプリは1種類ずつ試し、様子を見ながら取り入れることをおすすめします。複数を一度に変えると、どれが効いたか(合わなかったか)わからなくなります。

アプローチ③ 医療的ケア(概要)

生活・環境の改善や栄養サポートだけでは夜泣きが落ち着かない場合、動物病院で処方・提案してもらえる医療的な選択肢があります。主なものは以下の通りです。

  • 睡眠導入剤・鎮静薬:脳に直接はたらきかけ、睡眠リズムを整える
  • 抗不安薬・精神安定剤:不安や興奮を和らげる
  • 漢方薬(抑肝散など):副作用が比較的少なく、穏やかに睡眠状態を改善する

これらは専門的な判断が必要なため、次の章でより詳しく解説します。

動物病院で相談できる薬・漢方の選択肢

獣医師に抱っこされるヨークシャーテリア

前の章で概要をお伝えしましたが、ここではひとつひとつの選択肢をより詳しく解説します。「毎晩眠れない」「もう限界かもしれない」という状況になる前に、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。

睡眠薬・鎮静剤・精神安定剤

オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサントなど)

もともとは人間の不眠症治療薬として開発されたものですが、犬への応用研究も進んでいます。自然な眠りに近い状態を促すしくみで、従来の鎮静剤よりも翌日に眠気が残りにくいとされています。高齢犬への有効性と安全性の報告も出てきており、獣医師と相談する選択肢のひとつです※4。

鎮静薬・精神安定剤・抗不安薬

夜鳴きが激しい場合や不安を原因とするケースでは、鎮静薬や抗不安薬が処方されることがあります。「安定剤を使うことへの抵抗感」を感じる飼い主様もいらっしゃいますが、愛犬ちゃん自身の苦しさを和らげるための選択肢として、前向きに検討してください。

⚠️ 市販薬についての注意

人間用の睡眠薬・市販の睡眠補助薬を夜泣き対策として老犬に与えることは大変危険です。必ず獣医師に処方してもらった薬を使用してください。

漢方薬

抑肝散(よくかんさん)は、もともと人間の認知症の周辺症状(興奮・夜間不穏・不眠など)に使われてきた漢方薬で、犬への応用も報告されています※5。副作用が比較的少なく、穏やかに興奮を鎮め、睡眠の質を改善する効果が期待されています。

愛犬に漢方薬を試したい場合は、必ず漢方に詳しい獣医師に相談し、犬用として処方してもらうようにしてください。

「漢方は体に優しいから大丈夫」と思われがちですが、人間用の市販品を自己判断で与えることは大変危険です。人間と犬では薬の代謝の仕組みが異なるうえ、漢方薬の多くに含まれる生薬「甘草(カンゾウ)」が、犬に偽アルドステロン症(低カリウム血症・高血圧・虚脱など)を引き起こすリスクがあることが報告されています。愛犬の命に関わる可能性がある点を、必ず頭に置いておいてください。

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アロマ・マッサージ・ツボ押し・音楽療法|補助ケアの取り入れ方

マッサージしてもらう大型犬

薬や漢方と組み合わせることで、リラックスや痛みの緩和を補助する効果が期待されています。認知症による不安、身体的な痛み、ストレスを和らげる手段として、ぜひ取り入れてみてください。

アロマテラピー

ラベンダー・イランイラン・フランキンセンスなどに鎮静・抗不安作用が報告されています。ディフューザーで寝室に拡散するか、首輪に1〜2滴垂らす方法が有効とされています※6。

ただし犬の嗅覚は非常に鋭いため、少量から始め、嘔吐・ぐったりするなどの異変が出たらすぐに中止してください。精油を直接舐めさせることは中毒のリスクがあり厳禁です。

マッサージ

就寝前に5〜10分程度、やさしくなでるようにマッサージすることで、関節の痛みや筋肉のこわばりを和らげ、オキシトシン(幸せホルモン)の分泌を促してリラックスさせる効果があります※7。

ただし長時間の拘束は逆にストレスになることがあるため、愛犬の様子を見ながら無理なく行ってください。

ツボ押し

頭頂部にある「百会」周辺への穏やかな刺激が、睡眠状態の改善に寄与するとされています。本格的な鍼治療を希望する場合は、獣医師の指導のもとで行ってください。

音楽療法

クラシック音楽や犬向けに設計されたドッグミュージックが、夜間の不安を和らげるとされる報告があります。

📌 補助ケアを取り入れるときの鉄則

いずれも「まずごく少量・短時間から試す」「愛犬に不快な反応が出たらすぐ中止する」が基本です。原因が病気や強い痛みにある場合も多いため、必ずかかりつけの獣医師と連携して取り入れてください。

近所迷惑や防音対策、マンション暮らしの方へ

近隣トラブル

老犬の夜泣きは飼い主様の睡眠を奪うだけでなく、近所への迷惑という問題も生じます。特にマンションや集合住宅にお住まいの方は、精神的なプレッシャーも大きいと思います。

まず近隣の方へのひと声を

黙って我慢し続けるより、事前に事情を話しておくことが飼い主様の心理的負担を大きく減らします。「高齢の愛犬が夜泣きをすることがあり、ご迷惑をおかけしてしまうかもしれません。治療・対処を続けています」と伝えるだけで、多くの方は理解してくださいます。

防音対策のアイデア

本格的な防音室の設置は難しくても、工夫できることはあります。

  • 防音カーテンの活用:音の漏れをある程度抑えられる
  • ペット用防音ハウス・テント:市販品もある(閉じ込めるのではなく、安心できる空間として使う)
  • 寝室を内側の部屋に変更する:外壁から離れた部屋に寝床を移すだけでも違いが出ることがある
  • 吸音マット・壁材の活用:壁面や床に吸音素材を使うことで音が響きにくくなる

⚠️ 口輪で夜泣きを止めようとしている方へ

口輪は愛犬ちゃんの苦しさや不安を増大させるリスクがあり、熱中症や嘔吐時の窒息リスクもあるため推奨されません。根本原因へのアプローチを優先してください。

飼い主様自身のメンタルケア|共倒れを防ぐために

デイサービスのお迎え風景

「耐えられない」と感じたとき

「老犬の夜泣きに耐えられない」「ノイローゼになりそう」
そう感じることは、介護疲れのサインです。ネット上の知恵袋や掲示板を見ると、同じ気持ちを抱えた飼い主さんのコメントが無数にあります。あなたは決して一人ではありません。

叱らないで|叱ることは逆効果

夜中に何度も起こされてイライラして、思わず叱ってしまいそうになることもあるかもしれません。でも、老犬を叱ることは逆効果です。認知症や不安から鳴いている愛犬ちゃんには「なぜ叱られているかわからない」のです。叱ることで混乱と不安が増し、夜泣きが悪化することがあります。

叱りたくなったら、いったんその場を離れて深呼吸を。「この子は今、苦しくて助けを求めているんだ」と思い直してみてください。

放置することへの罪悪感を抱えないで

「老犬 夜泣き 放置」「老犬 夜泣き 無視」というキーワードで検索している飼い主様も多くいます。そのほとんどは「どうしても眠れない夜、しばらく様子を見た」という経験からではないでしょうか。

「しばらく様子を見た」ことは、放置でも無視でもありません。そしてもうひとつ、大切なことをお伝えします。

「鳴いたら必ずすぐ対応しなければ」という思い込みは、手放していいのです。

毎回すぐに飛び起きて対応することで「鳴けば来てくれる」と学習し、かえって夜泣きが強化されてしまうケースもあります。夜泣きへの対応は「毎回完璧に」ではなく、愛犬ちゃんの安全を確認しながら、飼い主様自身のペースで関わることで十分です。

自分の睡眠と健康を守ることは、長く介護を続けるために不可欠なことです。あなたが倒れてしまえば、愛犬ちゃんのそばにいることもできなくなります。「少し様子を見た夜」があっても、それはあなたの愛情が足りないのではなく、明日もそばにいるための選択です。どうか自分を責めないでください。

一人で抱え込まないためにできること

  • 家族・パートナーとの交代制:深夜担当と早朝担当を分けるだけで負担が変わる
  • 老犬ホームのショートステイ・デイサービス:定期的に数日預けることで飼い主様の休息時間を確保する
  • 動物病院への早め相談:「まだそこまでじゃないかな」と思わず、気になった段階で相談する
  • 同じ経験を持つ飼い主様とつながる:SNSやオンラインコミュニティで悩みを話せる場を持つ

💛 大切なこと

「続けられる介護」こそが、愛犬にとっても最善のケアになります。あなた自身を守ることは、愛犬を守ることと同じです。

まとめ:愛犬との大切な時間を守るために

老犬の夜泣きは、原因を知ることで対策の糸口が見えてくる問題です。

原因別の対策早見表

▶認知症(CDS)によるもの
生活リズムの固定・MCTオイル・DISHAA評価・薬の検討

▶痛みによるもの
動物病院での痛みの治療・体圧分散マット・寝床の見直し

▶不安・寂しさによるもの
そばに寄り添う工夫・ナイトライト・飼い主様の匂いのするタオル

▶要求・不快感によるもの
就寝前のルーティン見直し・空腹・温度・トイレの確認

どれかひとつで解決しないことも多いため、いくつかのアプローチを組み合わせることが大切です。そしてなにより、早めにかかりつけの獣医師へ相談することをおすすめします。「夜泣きくらいで病院へ」と思わなくて大丈夫です。夜泣きは、愛犬ちゃんの体と心のSOSかもしれないのですから。

あなたが毎晩、眠れない夜をひとりで抱えていることを、私たちはよく知っています。
その疲れも、愛犬ちゃんへの愛情の深さも、すべてわかります。
どうか、少しでも楽になれる夜が来ることを願っています。

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【参考文献・引用元📚】

この記事の執筆者

執筆者

老犬介護
ハピネス 編集部 Y・A

愛犬を5匹見送った経験を持ち、老犬介護の大変さと尊さをよく知る人物。今もシニアの小型犬との快互(愛犬も飼い主も快適な介護)を実践しながら学びを深め、同じ悩みを抱える飼い主様への情報発信に努めている。動物保護ボランティアへの支援も行っている。