愛犬の皮膚をふと触ったとき、「あれ、ここ赤くなってる」と気づいた経験はありませんか。
床ずれは、早ければたった1日で発生します。最初は皮膚が少し赤くなる程度でも、放っておくと皮膚が破け、骨が見えるほど深い傷になることも。悪化すれば細菌感染から命に関わることさえあります。
「皮膚が少し赤くなっているけど、これって大丈夫?」
「床ずれができてしまったら、まず何をすればいい?」
そんな不安を抱えながら、この記事にたどり着いた方も多いかもしれません。正しい知識があれば予防できますし、早期に気づけば家でのケアで回復させることも可能です。
この記事では、床ずれのメカニズムから初期サインの見つけ方、お家でできる応急処置、そして病院へ行くべきタイミングまで、順を追って解説していきます。
なぜ「床ずれ」は怖いのか🐾

床ずれのメカニズム
床ずれ(褥瘡:じょくそう)とは、長時間同じ姿勢でいることで体重がかかり続けた部位の血行が阻害され、皮膚や皮下組織が壊死(えし)してしまう状態です。
犬は痛みを言葉にできません。気づいたときにはすでに重症化していた、ということも少なくないため、飼い主様が日頃から「わずかな変化」に目を向けることがとても大切です。
床ずれが起きやすい状況
- 足腰が弱り、自力で寝返りを打てなくなった子
- 長時間同じ姿勢で寝ていることが多い子
- 体重が落ちて筋肉や脂肪が減ってきた子
- 皮膚が薄くなってきた高齢犬
床ずれができやすい場所と初期サイン🔍

要注意の部位⚠️
骨が出っ張っている部分は皮膚と床の間に肉が少なく、圧力が集中しやすいため特にリスクが高い箇所です。※1

- 頬・顎の下(横向きに寝ることが多い子)
- 肩・肘(前足側に体重がかかりやすい子)
- 腰・腰骨の出っ張り
- かかと・足首
大型犬は体重が重いぶん圧力も大きく、小型犬は皮膚が薄いぶん傷みやすい傾向があります。
見逃さないで!初期のサイン✅
以下のサインに気づいたら、床ずれの始まりを疑ってください。早期発見が重症化を防ぐ唯一の方法です。
📖床ずれを防ぐベッド・マット・クッションの選び方はこちらをご覧ください。🛏️💚
床ずれにならないための予防3原則🛡️

プロも実践している、今日からできる予防法です。
① 2〜3時間おきの「正しい」寝返り⏰
特定の部位への圧迫をリセットするため、2〜3時間おきに体位変換(寝返り)を行いましょう。
⚠️重要な注意点
寝返りの方向を間違えると内臓への負担や誤嚥につながります。仰向けにはせず、必ず「お腹側を下」にして回転させてください。※2
📖寝たきりのお世話のコツや体位変換の仕方などを詳しく解説しています🐶🙌
② 皮膚の清潔と保湿🧼
排泄物による汚れや湿気は皮膚のバリア機能を弱め、床ずれのリスクを高めます。
寝たきりの愛犬には、ベッドにペットシーツを敷いてあげる方法がおすすめです。
おむつに比べて蒸れにくく、汚れにもすぐ気づけるうえ、排泄物が皮膚に密着しすぎないという利点があります。
汚れたらこまめに取り換え、清拭した後は保湿ケアで皮膚のバリア機能を守ってあげてください。おむつを着用している場合も、汚れていないかこまめに確認し、交換のたびに清拭と保湿を行うようにしましょう。※2
📖寝たきりの愛犬の日常ケアについて詳しくは下記のコラムをご参照ください🐩💤
③ 栄養管理(アルブミン値の維持)🥩
痩せて筋肉や脂肪が落ちると、骨と皮膚の間のクッションがなくなり、床ずれのリスクが大幅に上がります。
皮膚の修復を助ける高タンパクな食事や、炎症を抑えるDHA・EPAなどの栄養素を意識した食事管理も、予防の重要なポイントです。※2
📖老犬の食事で大切なポイントやフードの選び方はこちらの記事をご覧ください🍚🐕
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お家でできる応急処置|まず清潔にして、保護する🩹

皮膚が赤くなったり、じゅくじゅくしてしまった場合は、自己判断で市販の薬を塗ったりパッドを貼ったりせず、まずかかりつけの動物病院に相談することが最も安全です。床ずれは表面に見える傷よりも皮膚の下で組織の壊死が広がっているケースがあるため、見た目だけでは判断できません。※3
病院へ行くまでの間にできる応急処置を3ステップでご紹介します。
STEP 1
患部の洗浄
生理食塩水またはぬるま湯(人肌程度)で患部を優しく洗い流してください。ゴシゴシ擦るのは厳禁です。可能であれば患部周りの毛を短く刈っておくと処置がしやすくなりますが、犬用バリカンがない場合にハサミを使うと誤って皮膚を傷つける恐れがあります。無理に刈らず、毛の処置は動物病院に任せるのが安心です。
STEP 2
傷口を乾かさず保護する
昨今の床ずれ治療では、傷口を乾かさない「湿潤療法(しつじゅんりょうほう)」が主流となっています。傷が膿んでいない初期段階であれば、洗浄後にワセリンを薄く塗り、その上からラップ状のもので覆って傷口を保護することができます。
これはあくまで受診するまでの応急処置です。ワセリンは膿んでいないごく初期の傷や乾燥予防の保湿に限って有効で、「軟膏(薬)」を自己判断で使用することは避けてください。動物病院では、傷の状態に合わせた専門的な軟膏・保護材・特殊なテープなどを処方してもらうことができます。※3
膿みや悪臭、皮膚の破れが見られる場合は密閉処置をせず、すぐに受診してください。感染が起きている部位を密閉すると症状を悪化させる恐れがあります。
STEP 3
直接圧力がかからないようにする
即席ドーナツクッション(タオルを丸めて輪ゴムで留めたもの)を傷口のまわりにあて、傷が直接床に触れないようにして保護します。梱包用の緩衝材(プチプチシート)をくるくると丸めてドーナツ状にしたものも、軽くて扱いやすく代用品として活用できます。これだけでも悪化を防ぐ大きな助けになります。

⚠️ 市販パッドを使う場合の注意
人間用のキズパワーパッドのような市販の湿潤絆創膏(パッド)などを使用する場合も、必ず獣医師の判断を仰いでください。膿みや感染が疑われる場合に密閉性の高いパッドを使うと症状を悪化させる危険があります。また老犬の皮膚は非常に薄く、粘着力の強い人間用パッドを剥がす際に健康な皮膚まで傷つけてしまう恐れもあります。
ハピネスがおすすめする床ずれケア用品💚
●老犬介護用 床ずれ予防クッション ドーナツ型小サイズ2本入(Petioペティオ)
表は通気性の良いメッシュ生地、裏は滑りにくい生地だから快適。圧迫を軽減して床ずれ予防に。手洗いできるので衛生的。大サイズ(1本入)もある。
●老犬介護用 床ずれ予防サポーター (Petioペティオ)
伸縮性のある生地だからフィット感が高い。二股ベルトはマジックテープで固定できるので着脱も簡単。抗菌・消臭仕様で丸洗いもできるのが嬉しい。大・中・小の3サイズ展開。
📖ベッド・マット・クッションによる予防環境の整え方は、こちらの記事で詳しく解説しています🛏️🐕
「病院へ行くべき」タイミングと治療内容🏥

⚠️ こんな場合はすぐに受診を
応急処置はあくまで「悪化を防ぐ」ための処置です。
以下のサインが見られる場合は、すぐに動物病院を受診してください。
- 傷口が膿んでいる、または悪臭がする
- 皮膚が破けて傷が深くなっている
- 骨が見えている
- 傷の範囲が広がっている
- 愛犬が強く痛みを訴えている
病院での治療
動物病院では、重症度に応じて以下のような治療が行われます。※3
- デブリードマン:壊死した不要な組織を取り除く処置
- 抗生物質の投与:細菌感染を防ぐ・治療する
- 高度な湿潤療法:特殊な創傷被覆材を使った専門的なケア
- 外科的処置:筋肉や骨にまで達した重症例への対応。皮膚移植などの外科的再建が必要になることも
受診後の自宅ケアで気をつけること
動物病院での処置を受けた後も、自宅でのケアが回復を左右します。基本的には獣医師の指示に従い、受診時に「次にどのような状態になったら連絡すべきか」をあらかじめ確認しておくと安心です。
包帯・保護パッドの交換タイミング🔄️
通常は1日1回が目安です。患部がじゅくじゅくしている場合は1日2回を目安に、また排泄物などで汚れてしまった場合はその都度すぐに交換してください。汚れを放置すると細菌感染のリスクが高まります。
自宅ケアのポイント🩹
処方された薬以外を自己判断で塗ることは避け、獣医師から指定されたパッドやワセリンなどで傷口を湿った状態に保ちましょう。また、どれだけ丁寧に処置をしても、同じ姿勢が続くと別の部位に新たな床ずれができてしまいます。2〜3時間おきの寝返りと、患部が直接床に当たらないようなポジショニングは、受診後も変わらず続けてください。
⚠️ 以下のようなときは、次の受診日を待たずに早めに動物病院へ連絡を
- 傷口から膿や悪臭がする
- 傷が広がっている、または深くなっている
- 患部が熱を持っている、または愛犬が触られるのを極端に嫌がる
- 食欲が急激に落ちる、元気がなくなるなど全身状態に異変がある
💡 再発予防は3年が目安
床ずれは一度治癒しても再発しやすく、3年程度は継続して再発予防に取り組むことが必要と言われています。完治したと感じても、寝返り・ポジショニング・栄養管理といった日々のケアを根気強く続けることが大切です。
おわりに:完璧を目指さず、愛犬と向き合う
床ずれのケアは、24時間気を張り続けなければならず、飼い主様自身が疲弊してしまうこともあります。でも、完璧にやろうとしなくていいのです。
一人で抱え込まず、動物病院のデイケアや老犬ホームのサービスを上手に使いながら、自分の心の余裕も大切にしてください。
床ずれのケアは、愛犬との「触れ合い」そのものでもあります。患部を確認しながらのマッサージや声かけを通じて、愛犬が「今日も一緒にいられて幸せだ」と感じられる時間を、どうか大切にしてください。
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【参考文献】
※1 「寝たきり老犬の床ずれケアと防止用品」キュティア老犬クリニック
※2 「床ずれの予防について」アステール動物病院(2021年7月)




